アフラトキシン
アフラトキシンは最も怖いカビの毒です。
1960年イギリスで起きた七面鳥の謎の大量死(七面鳥X病事件)の原因物質として見つかりました。
X病事件では限られた地域で発生したため感染症が疑われましたが、そのような病原性微生物、ウィルスは見つかりませんでした。
感染といった現象も見られなかった。有害金属も見つからず、罹病する七面鳥の月齢や性別も関係しない、元気だった鳥が突然動けなくなって死んでしまう。
これがX病と名付けられた理由です。
致死性が高いものの、死ななかった場合エサを変えると回復するような所から餌が疑われました。
でもエサから毒物らしきものは検出されない。
顕微鏡観察により餌として使用していたピーナッツミールからA. Flavusというカビを発見、これの培養液に毒性があることが判明しました。
培養液から4種の成分が単離され生産菌のA. Flavusの名前とと、青(B)と緑(G)の蛍光を持つことからアフラトキシンB1, B2, G1, G2と命名され命名されました。
その中で最も強い毒性を示すのはアフラトキシンB1で急性毒性もさることながら、雄ラット12 mg/日, 245日での発がん率80%と極めて高い発がん性を示すことが判明しました。
ピーナッツだけではないでしょうが、価格の高くないナッツ類は船舶で輸入されます。
船倉のなかは、適度な湿気と高温(ナッツ類にエアコンを入れるでしょうか?)で、ナッツという栄養の塊です。まさにカビにとっては最高の条件です。
輸入ナッツ類は気をつける必要がありますが、現在は入管時に徹底的に検査をしていることから、スーパーで買う時にはさほど気にしなくても良いそうです。
アフラトキシンそのものは安定ですが、体内に入ると排泄すべく肝臓で酸化されエポキシドとなります。
ベンゾピロン環部分がπ電子相互作用によってDNAの塩基の隙間に入り込み、エポキシドがDNA塩基をアルキル化、機能を無効にしてしまいます。
その結果、ほとんどの細胞は死滅してしまいますが、運が悪いとがん化してしまいます。
実はこの発がん機構は、抗がん剤のメカニズムと同じです。
言い換えれば、抗がん剤には発がん性が少なからずあるといって間違いがありません。
(抗ガン剤開発で健常人対象にした安全性試験、いわゆるphase I試験を省略するのはこれが理由です。ボランティアをガンにしては大変です。)
左ボタンを押してドラッグすると分子を動かすことができます。
(MolFeatプラグインが必要です。)