葉酸の働き


葉酸の生合成を阻害すると抗菌活性が発現することは判りました。
では葉酸は体内でどうして重要か考えてみましょう。葉酸はグリシンとチミジンの合成酵素の補酵素になっているからです。

セリンの生合成

テトラヒドロ葉酸はセリンの生合成に関わっています。
反応はまず、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼの中でセリンとピリドキサールリン酸とが脱水縮合して、イミンを形成します。
その結果、アミノ酸のα位の酸性度が増し、容易に脱水して安定な共役二重結合を形成します。
そののち、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼに取り込まれたテトラヒドロ葉酸の窒素原子と反応します。
反応は、ピリジン環の窒素がプロトン化されることによって、二重結合が一つずつ移動し、4-エキソメチレンジヒドロピリジン誘導体になります。
そののち、プロトンが移動してピリジン環に戻ります。
次に、プテリジン環の窒素が、セリンのβ炭素を攻撃します。この炭素の隣はイミン二重結合となっており、ベンジル基と同様に容易にSN2置換を受けます。
その結果、テトラヒドロ葉酸には炭素が一つ増えたN5,N10-メチレンテトラヒドロ葉酸と、セリンーピリドキサール複合体は炭素が一つ少なくなったグリシンイミン(アルジミン)となります。。
その後加水分解されてグリシンを与え、同時にピリドキサールリン酸を再生します。

下はセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼです。
中に葉酸とイミン型の具リシンが付加したピリドキサールが挿入されています。


拡大するとプテリジン部、ピリドキサール部構造がはっきりします。セリンのβ炭素はすでにプテリジン部に移動しています。

    3D図を示しました。(MolFeatプラグインが必要です)

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チミジル酸シンターゼ

セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼでグリシンを生合成した時、同時にN5,N10-メチレンテトラヒドロ葉酸が生成します。
このN5,N10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、チミジンの炭素として利用されます。

下の図は5-Fuを阻害剤に用いた時のX線結晶解析図です。

反応の中心部拡大図を下に示します。

5-フルオロウリジンを用いているため、これ以上の反応は進行しません。
リボース部分を持たない5-フルオロウラシルは抗腫瘍物質として有名ですが、これがチミジル酸合成酵素を阻害する機構となります。細胞分裂の盛んなガン細胞では材料となるチミンを合成することができず死滅することになります。
    

勿論、正常細胞も5-フルオロウラシルによってダメージを受けます。
しかし、細胞分裂の盛んなガン細胞の方がよりダメージを受けることを利用しています。
「肉を切らせて骨を断つ」の考え方ですね。
この考え方は多くの抗がん剤に利用されています。
    3D図を示しました。(MolFeatプラグインが必要です)

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