maltoseの安定配座? (1)

マルトースの立体配座について調べてみたくなった。
理由は、V. S. R. Raoらの"Conformation of Carbohydrates"によれば、X線結晶解析を基にした配座解析の例は複数あるが、グルコシド結合部分の配座は複数(論文の数だけ?)あったからである。
計算はMMFFを用いて配座解析を行いデフォルトで保存された全ての安定100配座について、 3-21Gで再最適化を行った。週末パソコンに計算させておけばOKかな。と思って金曜日にはじめたが、計算が終了したのは火曜日の夕方。はさすがにab initio計算は、3-21Gでも重たい。(100配座を4日で出来ることをすごいと思うべきか?)
計算の結果下に示した構造(左側)が最安定配座として求められた。
 得られた最安定配座はMMFFでの最安定配座より1.6kcal/molエネルギーが高い配座を初期配座にしたものであった。

こんな計算をしていたら、あるとき、Spartanの画面下方にこんなウィンドウがあって、分子がクルクル回っている。

何だか解からないのでマニュアルを読んでみたら、Spartanの持っているデータベースを示しているらしいことが解かった。マニュアルを読んでも使い方が解からないので、Wavefunctionの内田さんに電話して初めて使い方が解かった。
Spartanは常にハードディスク内のSMD (Spartan Molecular Database)にアクセスしていて、ヒットした構造がでるようになっている。なるほど構造を作ると画面の下にその化合物名がでていた。長い間これに気が付かなかった。そして化合物名の左側の▲ボタンを押すとこのウインドウが現れる仕組みになっていた。
Spartan02のインストールには非常に時間がかかったが、これが原因とやっと理解した。

こうなってくると、自分の求めた配座が最安定配座であったかを調べたくなる。
そこでSMDの6-31Gでもとも他という構造を、3-21Gで全ての原子を固定してエネルギーも、求めてみた。
結果を下に示す。

コンフォーメーションで新たに見出した配座 SMDが示す最安定配座
二面角(C4H-C4-O-C1') -2.5 deg -27.3 deg
二面角(C4-O-C1'-C1'H) -15.8 deg -18.6 deg
相対立体エネルギー -1.25 kcal/mol 0 kcal/mol

驚いたことに、自分で求めた配座のほうが1.25kcal/mol安定であった。グリコシド結合周りの二面角を上に示したが、明らかに別の配座である。今回見つかった配座は再安定から4つ目の配座を初期配座としている。
マニュアルによればSMDはMMFFで求めた最安定配座を初期配座にして、構造の再最適化を行っているという。
確かにSMDの配座はMMFFでもとめた最安定配座に似ていた。

 結局、データベースを活かすも殺すも使う人次第ということらしい。