Pummerer反応を利用したチオグルコースの合成



 Pummerer反応はスルホキシド酸素を隣の炭素に転移させる転移反応です。発見された当初、この反応は無水酢酸存在下高温で反応させる必要があり、反応基質内に反応しやすい官能基があると、そちらの分解が無視できなく、一般に収率のよいものではありませんでした。当時北大の紺野−松本らによって、この反応はトリフルオロ酢酸を用いることにより低温でも収率よく進行することが報告され、複雑な天然物合成にも応用できるようになりました。私たちは、この反応をチオグルコース誘導体の合成に応用しようと計画しました。



検討した結果、保護基としてアセトニド基を3位と4位に有する誘導体についてピリジン溶媒中でトリフルオロ酢酸を作用させると望む反応が選択的に進行することが判明しました。この反応の理由を、配座解析をふくめた半経験的分子起動計算によりアセトニド基が環の歪を局在化させ反応を選択的にさせていることを明らかにしました。実際に、アセトニドの位置が異なった誘導体を合成して実験を行ったところ、転移は望まない位置で選択的に進行することを確認しました。この反応を利用することにより、新たな硫黄置換型人工糖鎖の合成に成功しました。



Matsuda, H., Fujita, J., Morii, Y., Hashimoto, M., Okuno, T. & Hashimoto, K. Pummerer rearrangement of 1-deoxy-5-thioglucopyranose oxides; novel synthesis of 5-thioglucopyranose derivatives. Tetrahedron Lett., 44, 4089-4093 (2003).

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