タキソール
タキソールはセイヨウイチイの樹皮から見出された抗腫瘍物質です。
当初は樹皮からのみ見つかっており、抗がん剤に使おうとした場合、大きな問題がありました。
樹皮をはいでしまうと樹は死んでしまうからです。
後に、イチイ葉に10−アセチルバッカチンIIIが見つかり、これを原料とした化学変換でタキソールを合成することができるようになりました。
葉を使いますので、毎年収穫することが可能になります。
1980-1990年代前半、タキソール全合成に向けて世界各地で熾烈な競争がありました。
1994年にホルトン教授、ニコラウ教授がそれぞれ独立して全合成に成功しました。
現在では、細胞培養法で安価に製造できるようになっているそうです。
タキソールはチュブリンに結合し、微小管の脱重合作用を阻害します。チュブリンタンパクはいくつも重なって(重合)微小管を構成しています。
細胞分裂時には微小管も二つに分裂するわけですが、これにはチュブリンの重合が解けなければなりません(脱重合)。
タキソールはチュブリンの脱重合を阻害します。
チュブリンの脱重合が阻害された細胞は分裂できず死んでしまいます。
細胞分裂の盛んなガン細胞ではより深刻なわけです。
X線結晶解析の写真では、タキソールはαサブユニットとβサブユニットとの間にあるのではなくβサブユニットの外側に結合しています。
タキソールが結合したチュブリンタンパクでは、脱重合に必要な配座を不安定化するのではないのでしょうか?
多くの抗がん剤がDNAに作用します。タキソールは抗がんメカニズムが全く異なるため、DNAと作用する薬剤とは異なった成果が期待されています。
左ボタンを押してドラッグすると分子を動かすことができます。
(MolFeatプラグインが必要です。)
エポチロンAも同様な機構により抗ガン活性を示します。