テトラサイクリン系抗生物質


バクテリアは細胞分裂を20分に一回の割合で行い増殖します。ヒトの細胞分裂が12〜36時間に一度の頻度で起きることと比較して増殖速度が極めて大きいことが判ります。、
タンパク質合成は言うまでもなくヒトも行っていますが、バクテリアの細胞増殖速度は非常に大きいため、タンパク合成が阻害されるとよりダメージを受けます。
テトラサイクリン系抗生物質はバクテリアが生きていくのに必要なタンパク質の合成を阻害します。




テトラサイクリン系は最初は放線菌の代謝物として発見されました。
ペニシリンをはじめβラクタム系抗生物質では、アミノ酸あるいはアミノ酸類似構造を有するためアレルギー、いわゆるペニシリンショックが問題となりました。
しかし、テトラサイクリン系抗生物質は、その構造からアレルギー源になりにくい特徴があります。

テトラサイクリン系抗生物質は幅広い抗菌スペクトルを有し、構造的にも安定で、経口投与が可能なため、広く用いられてきました。
製造コストも低く、家畜飼料に混ぜて使用することもあるそうです。
しかし個のような安易な使用が原因で、耐性菌の蔓延を引き起こしてしまってもいるようです。




テトラサイクリン結合部位の拡大





左ボタンを押してドラッグすると分子を動かすことができます。縮小していくと巨大たんぱくの中で起きている現象であることを実感できます。
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テトラサイクリンには耐性菌ができやすいという問題があります。
その機構は
1:テトラサイクリンに結合するタンパクが合成され、体外に汲みだされてしまう。
2:テトラサイクリンに結合するタンパクが合成され、リボソームへの結合を妨害してしまう。
の二つが挙げられます。

下はドキシテトラサイクリン耐性菌は下のようなタンパクを生産してドキシテトラサイクリンを取り込んでしまい、細胞外に運んでしまいます。
このような耐性菌、耐性細胞による薬剤の汲みだしは、抗がん剤でも問題になっています。




このタンパク質がドキシテトラサイクリンを直接捕まえているのは、ヒスチジンに配位したマグネシウムイオンで、タンパク合成酵素を阻害するときと同じメカニズムです。
さらにタンパク質表面がドキシテトラサイクリンを包み込み逃げられなくしています。







左ボタンを押してドラッグすると分子を動かすことができます。
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