Spartan04でNMRの化学シフトが予想できる??
5-チオ-2-デヒドログルコピラノースの対応するスルホキシドへ酸化を行ったとき、得られたスルホキシドは1:1のジアステレオマー混合物であった。スルホキシドの立体化学をNMRで決めるのはなかなか難しい。
エクアトリアルスルホキシドは1位のメチレンとともにゴーシュ配座となるが、アクシアルスルホキシドは1位メチレンとの関係が、一方はゴーシュ、一方はアンチとなる。従って、エクアトリアルスルホキシドは二つのメチレン水素は似た挙動をし、アクシアルスルホキシドでは異なった挙動をすると予想できる。このようなメチレンの化学シフト変化量から立体化学を推定できたが、完全な決め手とはならなかった。
この帰属に苦労していた頃、Spartan04がリリースされ、化学シフトが予想できるというので早速バージョンアップして計算した。計算は基底関数631G*を用いたHatree-Fockでおこなった。計算結果は、Newman投影でぐちゃぐちゃ考えたのと一致、更にDipoleもTLCの挙動を支持したことから、スルホキシドの立体化学の帰属に自身を持つことができた。
NMR化学シフトの予想にはものすごく時間がかかった。計算したのは単純なテトラヒドロチオピランオキシドであったが、一晩近くかかったと記憶している。感覚的なことだが、配座ごとに化学シフトが大きく異なる(逆に言うと3次元的要素も考慮している)ので、水酸基などを付けると、複数の安定配座が出来るため、計算後の評価がとってもややこしくなると感じた。
この内容はチオ糖合成の一部として報告した。(Fujita, J.; Matsuda, H.; Yamamoto, K.; Morii, Y.; Hashimoto, M.; Okuno, T.; Hashimoto, K. Tetrahedron 2004, 60, 6829-6851.)