Spartanの配座解析


Spartanを使っていて、もっとも便利な機能は配座解析だと思う。
配座解析としては、ConflexとMacromodelが有名。Conflexはもともと大沢先生、後藤先生によって開発された配座解析プログラムで、以前は無料であったと記憶しているが、最近はCONFLEX株式会社が管理しているので有料と思われる。Spartanの昔のホームページ(Spartan 5.0)では、Osawa Methodという言葉が出てくるし、ボンド回転制限方法や、回転の角度などの設定はConflexと似ているので、配座解析のアルゴリズムは同じと思われる。
ConflexはCAche(富士通)にもオプションでパッケージ用意されているが、CacheはSpartanに比べて高価で手が出せない。Conflexオプションだけでも、Spartan本体自身と同じような値段になってしまう模様。
Spartanの配座解析の特徴は分子軌道法でも配座解析が出来ること。
Conflex5やChacheでも分子力場しか使用できない(らしい。使ったことは無いので本当は知らない。ホームページを調べた限り、そのようだ。)ことを考えると、Spartanにしか出来ないことになる。特に生体分子のように官能基が複数あると、力場法ではパラメータに無理あることが多い。分子軌道が使えれば、実質的に官能基の制限がなくなる。
 もっとも、分子軌道法で配座解析が出来るのは、半経験法のみであろう。ab initioでは簡単な分子でも一配座を最適化するのに数時間もかかってしまうので、配座解析は現実的でない。半経験法でも力場法に比べれば比較にならないくらい時間がかかるので、自分たちの化学の知識から、回転させる必要の無いところを指定して、探索させる配座の数を減らす工夫が必要だ。無意味な配座を減らし数十くらいの配座に最初から絞り込めば、威力を発揮。
我々の単離したlambertellolの絶対配置決定において、Spartanの配座解析が威力を発揮した。
下の誘導体をAM1で配座解析した。分子軌道法を用いたのは、今回の計算の目的ではベンゼン環のπ電子と酸素の孤立電子対との相互作用が重要で、分子力場法では考慮していないと考えたからであった。
SP3炭素に付いたベンゾアートの立体配座はよくわかっているのでこの部分は固定し、矢印のところを回転、赤丸部分をフリップさせて配座解析を行った。AM1では配座解析は一晩で終了した。

計算の結果、グローバルミニマムから5キロカロリー以内の8配座を下に示した。

その結果二つのベンゾアートの関係は常に右ねじの関係で、相反するものは無くCDスペクトルから、その絶対配置を決めることが出来た。



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